グラビア印刷機

第11号
グラビア印刷機の老朽化対策(改修)
印刷機の老朽化の意味するもの

少し古い話になりますが、2014年3月31日の「包装タイムズ」に印刷加工業実態調査のシリーズで「印刷機老巧化業界再編を刺戟か」という記事がありました。
そして老巧化対策として、メンテナンス25%・新規導入7%・廃業4%・その他13%という結果が書かれていました。
新規導入の例としてセクショナルを取り上げ、1ユニット2500万円から3000万円かかるので新規導入もたやすいことではないということでした。

 

この記事を読まれた読者は「確かにその通りだ」 と、絶望的な気持ちになったのではないでしょうか?
でも本当にそうなのでしょうか?他に方法はないのでしょうか?
★★あります★★
以下にその方法を述べていきますので、最後までお読みください。

戦闘機を老朽機と呼ばないのは何故

現在航空自衛隊の第一線で活躍中の戦闘機 F-15は1970年代にアメリカで生まれ、航空自衛隊で実戦配備されたのは1986年です。
以後30年にわたって第一線で活躍し続けています。
では30年経ったこの戦闘機を老朽機と呼ばないのは何故でしょうか?なぜ30年も第一線で活躍できているのでしょうか?

 

それは、この30年間の電子技術の進歩を利用して、その時代の要求に合うようにレーダやミサイルや支援機器を、絶えず改修してきたから、F-15は何年たっても最新鋭機なのです。
そして、F-15戦闘機は、次期戦闘機F-35が実践配備されるまで、更なる改修を重ねながら最新鋭機であり続けるのです。

老朽化していない古い印刷機

もうお分かりですよね。
印刷機もF-15と同じように、その時代の要求に合わせて改修をし続ければ、決して老朽機になることはないのです。
ここにまさに対照的な2つの会社を例にあげてみたいと思います。
一つはなかなか利益があげることの出来ないAという会社。一つは税金対策をどうしようかと考え、決算前に設備の改修をしようかと考えているBという会社。
この二つの会社の違いは、それぞれの工場に入ってみればすぐわかります。
A社の機械は購入した時以来何の改修もしていません。中には故障したまま放置している機械もあります。

 

ではB社はどうでしょうか?
器械は古いのですが、色々と工夫して、全ての機械に改修の後がみられます。
この違いが結果として、片や儲かる会社、片や儲からない会社になったという訳です。
結論
★★改修をしないで儲かることはない★★

言葉の意味
修理;壊れたところをなおす。現状維持。
改造:Aという機能の機械に手を加えてBという機能にする。
改修:Aという機能の機械に手を加えて、時代のニーズに合うように性能を向上させる。


ヤマデンお役立ち情報 第11号2頁
 
ヤマデンの改修実績

上の写真、少し解かり辛いですが、何年も使用しないで放ってあったボロボロの印刷機を、フレームだけ残して最新式のセクショナルに改修したものです。
「包装タイムズ」では1ユニットあたり2500~3000万とありましたが、ヤマデンで改修すれば、半分の1500万位でしょうか?

 

でも予算のない会社がセクショナルにする必要はなくて、従来のものでもプチ改修で十分な成果を上げることができます。
身の丈に合った改修が大切です。無理してセクショナルを導入しても会社を倒産させては何にもなりませんから。

改修をしていない機械で一番最初に手をつけなければならないのがテンション関連です。
インフィード・アウトフィード・巻取の中で手動のところがあったら、先ずそこを自動テンコンに替えます。
特にインフィード・アウトフィードにPIV(ギヤボックス)を使用しているものがあったら、これも手動式の機械ですから、すぐに自動式のテンコンに替える必要があります。
インフィード・アウトフィードは予算が許せば速度テンコンがベストですが、予算が無い場合はトルクテンコンでも、手動式に比べれば、各段に良くなります。
テンション関連の自動化が終わったら、次に圧胴とインフィード・アウトフィードの開閉が手動式なら、それをエアーシリンダ式に改修します。
次に乾燥・ドクタ周りを調べて品質の向上に効果があると思われるところから手掛けていきます。

 

巻取機もパウダ式でも十分使えますが、更なる性能アップを望むなら、サーボ式に改修すべきところです。
さらに巻取機には巻きの横ずれを防ぐために、当たり前見たいにサイド板を使用していますが、品質のアップと工数の低減を模索するならば、タッチロールの採用が欠かせません。

ヤマデンは老巧化した機械を、プチ改修によって取敢えずテンコンを自動化し、次にテンコン以外のところを改修して普通の機械にし、最終的に今の機械を最新鋭機へと改修していきます。
そして、儲からなかった機械を儲かる機械へと変身させます。
★★改修の継続が利益の継続★★



第13号

なぜグラビア印刷機のインフィードとアウトフィードのテンションコントローラ(以下テンコン)はサーボモータを使用した速度テンコンでなければならないのでしょうか?
ヤマデンが速度テンコンを世にだして10年以上がたちます。
その間インフィード(IF)とアウトフィード(OF)のテンションの重要性を発信し続けていますがまだまだ理解されていないのが多数というのが現状です。

 

それには、こちらの説明の仕方が不十分な点があったのかも知れない、という反省に立ちながら再度解説を試みたいと思います。
★★★★
以下に代表的な3つのテンション制御方式の内容とその違いについて述べていきますので、最後までお読みください。

テンション原理図をご覧ください。
印刷機の善し悪しは次の2つの条件を満たしていることが必要です。

  1・ この図の「IFテンション」と「OFテンション」が広範囲(0.5kg~30k)にわたって安定していること。(高精度)
  2・ 切換え時に巻出機と巻取機からのショックが「IFテンション」と「OFテンション」に影響を与えないこと。(ふんばり)

この図のIFとOFの構成部品が書かれているNO・1の制御方式が、この二つの条件を満たしており、グラビア印刷機における、理想的な制御方式です。


図におけるIFとOFがパウダブレーキとパウダクラッチで構成されるNO・2の制御方式です。
IFではクラッチに一定の電圧をかけ、ブレーキ電圧を制御して、テンションを設定値に保ちます。
OFではブレーキに一定の電圧をかけ、クラッチ電圧を制御して、テンションを設定値に保ちます。
パウダによる制御はトルク制御なのですが、
トルク制御は速度制御とちがって「ふんばり」がききません。
そのため「IFテンション」は巻出しテンションの影響をうけます。

 

ブレーキだけでは巻出しテンションよりも小さい「IFテンション」を制御することができないのです。
それで、クラッチに一定電圧をかけて、巻出しテンションよりも小さいテンションを制御できるようにしたのが、この制御方式なのです。
OFも同様の原理になります。
理論上はこれで良さそうなのですが、実際はブレーキとクラッチが絶えずケンカしているため制御が不安定で、更にパウダの寿命も縮めてしまいます。

原理図におけるNO・3の構成がこの制御方式になります。
IFはダンサロールの位置情報をワイヤーで連結したリングコーンに伝え、速度を一定に保つ速度テンコンの一種です。
テンションの大きさはワイヤーにつるされた重りで決まります。
リングコーン方式は、インバータが普及する以前に考案された、モータの無段階制御方式のことです。精度はインバータほど高くありませんからテンションの精度もよくありません。
OFはPIV(ギヤボックス)方式です。
主軸とピンチロールがギヤボックスを介して接続されており、ギヤ比を変えることによりテンションが上下します。これも速度テンコンの一種です。

 

実験した人にはわかりますが、少しの速度変化でテンションは大きく変動します。
しかもこの方式は自動ではなくて手動ですからテンションを変化させてから落ち着くまで、かなりの時間がかかります。
また「ふんばり」もきかないため、切換え時のショックがOFにもろに伝わり、落ち着くのに数分かかることもあります。その間は不良品を垂れ流すこととなるのです。
この方式のもう一つの欠点は、IFにもOFにも表示器が無いため、テンションが大きく変動しているのに、それを目で確認できないことです。
テンション表示無しで印刷をする、ということがどんなに恐ろしいことか、理解できない人がいるということが、実に恐ろしいことです。

同じ時期に創業したのに、何十年か経った現在業績をのばして大きくなった会社と、そうでない会社があります。
成功したある会社の社長が、「会社を大きく出来るか、そうでないかは度胸で決まる」と言いました。確かにそれも事実だと思いますが、私は「成功するかしないかは、トップの理解力」だと思っています。
儲かっていない会社の機械は購入した時のままです。もちろん途中で故障したこともあったでしょうから、修理のための費用はかけたことと思います。
一方儲かっている会社は修理はもちろん、性能アップのための改修にお金を使っています。
設備投資という言葉がありますが、修理に使ったお金を設備投資とはいいません。使ったお金に対し配当が無いからです。

これに対し改修は機械の性能アップを目的としますから、改修した翌日からロスが減少しますので、この減少したロスの分が配当として戻ってくることになるのです。ですからこれを設備投資と呼ぶことができます。
結論として言えることは、設備投資を積極的に実施してきた会社は儲かっている会社で・設備投資を行わなかった会社は儲かっていない会社ということができます。
その差はどこからくるのかというと、会社のトップの機械の性能、とりわけテンションに関する理解があるかどうかということになります。
この「お役立ち情報」を読まれた会社トップがテンションの重要性を理解して、設備投資を行い、配当をものにして、儲かる会社に変身することを、心から願っています。

★★設備投資が利益の分かれ目★★

1・この図はサーボモータとサーボモータを使用した速度テンコンである。
2・この太枠の中身が
パウダクラッチ・ パウダブレーキ・ インバータモータ
となっているのがパウダ式トルクテンコンである。
3・この太枠の中身が
ダンサロール・リングコーン(インフィード)
PIV(アウトフィード)
となっているのが旧式の速度テンコンである


第19号

現在、セクショナル機を導入するにはすぐ
1億円以上の費用がかかります。
ですから元を取るのにかなりの期間がかかってしまいます。
ではセクショナル機は新品を購入するしか方法はないのでしょうか。
改修という方法があります。
フレームとその他使えるものだけ残して
セクショナル方式に変えてしまうのです。
費用がかなり節約できます。
例えば新品の購入に1億円かかるとします。

もしそれが6千万円で改修できれば4千万円節約でき、それを他の機械の改修費用に充てることができ、工場全体の生産力アップにつながります。
でもこんな疑問がわいてくるのではないでしょうか。
「費用は安くできても性能は大丈夫なのだろうか?」
この疑問に応えるために次の項から順番に説明していきます。


「セクショナルドライブ」のことを略して
セクショナルと呼んでいます。
グラビア印刷機は、各ユニットの印刷版を
回転させるのにメインのモータを設置して
メインシャフトを介して動力を伝達します。
セクショナルは、メインのモータとシャフトの代わりに、各ユニットにサーボモータを
付けて版を回転させる方式です。

◆セクショナルの特徴
1・ ギヤによる接続部分がなくなりますので騒音と振動がなくなります。
2・ カラコンの方式
コンペン方式は各ユニット間の距離を増減して見当を合わせますが、セクショナルは回転中の位相を変えて見当を合わせます。


グラビア印刷機の性能を判断するのに大事なポイントはテンション、乾燥、ドクター周りです。
印刷機を評価するときは、この3点をしっかりと見極めることが大事なポイントです。
◆テンション
印刷機の見当ずれの原因はほとんどがテンションが原因です。
巻だしは直接印刷に関係ありませんが、インフィードとアウトフィードのテンションは印刷に大きな影響を与えますのでとても重要です。
また、巻取りのテンションは製品の仕上がりに影響しますのでここも重要です。
巻取りテンコンが良くないと、巻締り、シワ、菊模様、横ずれ等の不良が発生します。

◆乾燥
乾燥の方式には2つあります。
電気によるものとガスによるものです。
電気にも2通りあって、乾燥ボックスの中にヒータを内蔵したものと、外部に熱風発生器をおいて、そこから乾燥ボックスに熱風を送り込む方式です。 
ヒータ内蔵式のものはやめたほうがいいと思います。
乾燥ボックスの長さ、排気機能、冷風、乾燥に留意します。
◆ドクター周り
ドクター装置は、使い勝手の良さとドクタの角度調整が簡単に出来るというのがポイ
ントではないでしょうか?
ドクタを抑えるエアーシリンダー付きがお勧めです。

おわかりのように、セクショナルとは版胴の駆動方式のことをいうのであって、3点のポイントがしっかりしていれば、新品でも改修品でも

さほど性能に違いはないと結論づけることができます。

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