テンションQ&A
まえがき 現在新しい印刷機はセクショナルを除けば,ほとんど生産されていないのが現状でしょう。
・機械的性能 以下それぞれについて検討を加えていきます。 1.機械的性能 セクショナルの場合、径差無しのシリンダで印刷されることが多いようです。 径差ゼロの場合、理論的にはユニット間にテンションは発生しません。 しかし、シリンダと圧胴とのあいだにスベリが生じる為、インフィードとアウトフィードのテンションがユニット間に伝わることとなります。 従って、適度のスベリが生じるように、圧胴の材質や原紙の進入角度等に配慮が必要です。 たとえセクショナルであっても、ユニット間のテンションが適当でない場合はシリンダに径差をつける必要があります。 またた、たとえセクショナルであっても、インフィードとアウトフィードのテンションが安定していないと、見当ずれに影響を与えるのはいうまでもありません。 3.見当ずれ修正能力 セクショナルが従来機に比べて特に優れているのは、この点ではないでしょうか? 従来機は修正するのにモータでコンペンロール動かして、ユニット間の距離を変えることにより見当ずれを修正しています。僅かですがユニット間のテンションに影響を与えます。 これに対し、セクショナルではシリンダの位相を変化させて見当ずれを修正します。ユニット間のテンションに影響を与えることありません。 しかもサーボですから、修正速度が格段に速いのです。 もし見当ずれが発生しても、瞬時に修正できることになります。 以上セクショナルについて話をしてきましたが、大体のところは理解できたものと思います。 ところで、従来機での見当ずれ及びロスの大きな原因は、なんといってもテンションです。テンションの不安定による損失は大きいものがあります。 この時期セクショナル導入の前に、従来の機械を今一度見直して、もしテンションに問題があるならばそこを改善するだけで、相当の品質アップとスピードアッが出来る筈です。 後は準備作業の効率化をはかることにより、稼働率をアップすれば、従来機でもまだまだ利益アップをはかることが可能となるのではないでしょうか。 2009年3月 -目次- 1.速度テンコンとトルクテンコンの違いは? 2.ダンサロールは速度テンコン? 3.パウダクラッチはトルクテンコン? 4.PIVは速度テンコン? 5.PIVでも切換時のロスは減る? 6.パウダとサーボどちらが良い? 7.テンコンは古くても大丈夫? 8.版の径差は何の為にある? 9.径差有りと径差無しではどちらが良い? 10.インとアウトのテンション値の決め方は? 11.インフィードだけで大丈夫? 12.一色目とばしてますが、、、。 13.見当ずれとテンションは関係ある? 14.横ずれとテンションは関係ある? 15. シワとテンションは関係ある? 16. カラコンの正しい使い方とは? 17. 巻出しのテンション値は? 18. 巻出しの助走は必要? 19.巻き取りのタケノコ状態を無くすには? 20.巻取機のDCモータが壊れたら? 21.巻出機のDCモータが壊れたら? 22.印刷の3要素とは?
Q1 速度テンコンとトルクテンコンの違いは? 時々、速度テンコンとかトルクテンコンとか耳にしますが、その違いがよくわかりません。 A1 テンションを制御する方法として2つの方法が考えられます。 ニップロールで原反を引っ張ると想定して、 引っ張る強さは設定張力よりも強い張力をかけて、その速度を増減するころにより張力を制御する方法。 もう一つは、速度はライン速度よりも速い速度をかけておいて、それのかける力(トルク)を加減して張力を制御する方法。 前者を速度テンコンと呼び後者をトルクテンコンと呼びます。 Q2 ダンサロールは速度テンコン? インフィードやアウトフィードで使用されているダンサロール式のテンコンは速度テンコンですか? A2 そうです。 原反の張力の変化によってダンサロールが動き、その動きをポテンショメータや電空変換機によって、電気信号に変えて張力を制御します。 モータの速度を制御するのに古くはリングコーンが使用されましたが、現在ではサーボモータです。 サーボモータを使用することにより安定した制御が行なわれロスを減らすことができます。 ダンサロール式は、 ・ポテンショメータ ・電空変換機 ・エアーシリンダ が劣化による故障を起しますので、それによるトラブルを招くことがあります。 Q3 パウダクラッチはトルクテンコン? アウトフィードやインフィードに使用されている パウダクラッチやパウダブレーキはトルクテンコンですか? A3 そうです。 パウダクラッチとパウダブレーキを同時に使用して張力を制御する方法ですが、パウダの寿命を短くする使い方のようです。 また調整や使い方を誤ると動作が著しく不安定になります。 さらに当然のことですが、トルクテンコンは巻取機や巻出機の変動をもろに受けますので、切替え時のロスを減らすことができません。 巻取機や巻出機のテンションが不安定だと、それがユニットのテンションに影響して、通常の運転中であっても、見当ずれを起こすことがあります。 Q4 PIVは速度テンコン? 昔の機械に使用されているPIVは速度テンコンなのでしょうか? A4 そうです。 PIVはギヤボックスの一種と考えられますので、速度テンコンです。原則手動のテンコンです。 たまに自動化を試みられた形跡のある機械を見かけますが、今の時代には通用しないものと考えます。 新しい機械にはほとんど使用されていません。 前世紀の遺物とでもいえる存在ではないでしょうか? 低速で見当ずれの調整をしてから速度をあげた時 テンション上昇するため、その都度調整する必要があり、安定するまで時間がかかります。 その間にかなりのロスが発生します。 早急に新しいテンコンに変えるべきでしょう。 Q5 PIVでも切換時のロスは減る? 速度テンコンはロスが減ると聞きましたが、PIVも速度テンコンだからロスは減りますか? A5 減りません。 確かにPIVは速度テンコンの一種ですが、いかんせん手動です。 経験した人はわかると思いますが、ライン速度を低い状態から高い状態にした時、落ち着くまでかなり長い時間かかります。 しかもそういう機械にはテンションメータがついていませんから、テンションを適当な状態にするのにも苦労されてると思います。 一日も早く新しいテンコンに変えるべきではないでしょうか? Q6 パウダとサーボどちらが良い? インフィードとアウトフィードに、 ・パウダクラッチ・パウダブレーキを使用したもの ・サーボモータを使用したもの とがありますが、どちらが性能は良いのでしょうか? A6 サーボモータの方です。 パウダクラッチ・パウダブレーキはトルクテンコンです。 トルクテンコンの場合は、たとえそれが自動テンコンであっても、巻取機や巻出機のテンションの変動がユニット間のテンションに影響を与えますので、見当ずれの原因となります。 これに対しサーボの場合、巻取機や巻出機のテンションが変動しても、ユニット間のテンションに影響を与えることがないので、通常運転中はもちろん切替え時のロスも最小限におさえることが出来ます。 Q7 テンコンは古くても大丈夫? 10年以上、ものによっては20年以上前に作られたテンコンが今でも現役として動いている機械があります。 故障さえなければテンコンは古くても大丈夫でしょうか? A7 大丈夫ではないです。 古いテンコンと新しいテンコンとをSLと新幹線とに例えるのですが、SLはいくら正常に動いていてもSLの能力しかありません。 今は新幹線の時代です。 古いテンコンと新しいテンコンではその性能に大きな差があります。 古いテンコンの場合、カラコンの力を借りてかろうじて印刷が出来てる状態ではないでしょうか? 新しいテンコンの場合カラコン無しでも良好な印刷が可能となります。 もちろん、カラコンをつけることによりさらに精度がアップするのは当然のことです。 Q8 版の径差は何の為にある? よく版の径差0.3などと耳にしますが、版の径差は何のためにつけるのですか? A8 印刷機のユニット間に張力を発生させるためです。 インフィードに近い版が一番小さく アウトフィードに近い版が一番大きくなります。 これにより、ユニット間に適当な張力が生じ良い印刷ができるという訳です。 つける径差により発生する張力が変わります。 径差を大きくすれば張力も大きくなります。 従って印刷する原反の種類・厚み・幅によって径差を変える必要があります。 径差は製版屋さんにまかせっ切りのところが多いようですが、本来は発注する側が径差の指示を出すべきものと思います。 また、インフィードとアウトフィードの張力値はユニット間の張力に合わせるのが理想です。 Q9 径差有りと径差無しではどちらが良い? 径差無しの方が良い印刷ができると聞いたことがありますが、そうでしょうか? A9 昔の古い方法で作られた版の場合はそんなこともあったかも知れませんが、新しい方法で作られた版の場合は違います。 版に径差をつけた方が良い印刷が出来ます。 もちろん、径差無しで印刷が出来ないわけではありません。 径差無しの場合は、インフィードとアウトフィードの張力によってユニット間の張力が決まりますので、それぞれの張力を安定化するのが重要で、さらに張力が伝わりやすい機械構造とすることが必要となります。 しかしながら、たとえ機械構造がそうであったにしても、径差をつければさらに印刷は安定するということです。 Q10 インとアウトのテンション値の決め方は? 原反の種類や厚みや幅などにより、テンションの値は変えるべきだと思うのですが、どういう風にして決めたらよいのでしょうか。 A10 径差によってユニット間のテンションが決まりますから、それにインフィードとアウトフィードのテンション合わせるのが理想です。 ユニット間にもテンションメータをつけてそれに合わせるわけです。 従って印刷する物によって径差を変えるのが理想です。 しかし現実はそこまでやれないので、実際は原反の種類・厚み・幅とテンションの推奨グラフを利用したり、現場での経験値を利用しているのが現状ではないでしょうか。 Q11 インフィードだけで大丈夫? インフィードのテンションがよければ、 アウトフィードはあまり影響ないという人がいますが本当でしょうか? A11 残念ながらそのように考えてる人もいるようですが、正しくありません。 もちろんインフィードは原紙の入り口ですから、 全てのユニットに影響を与えます。アウトフィードは出口ですが、後半のユニットに影響を及ぼします。 たとえば、もし機械が4色機であれば3色と4色には影響を与えるということです。 後半で見当ずれや、横ずれがあるときは、とりあえずアウトフィードのテンションをチェックする必要があります。 Q12 一色目はとばしてますが、、、。 裏刷りの関係で、裏刷りのないものは1色目をとばして2色目から印刷していますが、何か影響ありますか? A12 影響あります。 1色目をとばすと、インフィードロールとシリンダ間の距離が長くなりますので、インフィードのテンションの精度が落ちます。 インフィードのテンションが不安定だと、全てのユニットの見当ずれの原因となります。 機械によってはドクターの付け替えが簡単に出来ないものもあって、1色目をとばしたくなるのでしょうが、「正早安楽」という言葉があるように、仕事をするうえで正しく行うのが1番でなければなりません。 先ず正しい運転をし、その上でドクターの付け替え等がスムーズにいくように機械を改造すべきです。 Q13 見当ずれとテンションは関係ある? 今まで見当ずれとテンションに深い関係があるとは認識していませんでしたが、本当はどうなのでしょうか? A13 大いに関係あります。 というよりもテンションが無いと、印刷は出来ないといって過言ではありません。 テンションをかけることにより、原反は“伸び”を生じます。 この“伸び”の割合がユニット間で異なるために見当ずれが起きるわけです。 言い換えれば、各ユニット間のテンションが一定ならば見当ずれは起きないことになります。 このことから性能の良いテンコンを装備しているかどうかということが、その印刷機の性能を大きく左右することになります。 Q14 横ずれとテンションは関係ある? テンションは縦方向の見当ずれには有効だと思いますが、横ずれにも関係あるのでしょうか? A14 あります。 普通テンションは縦方向の見当ずれのみ有効と思われがちですが、横ずれにも大いに関係あります。 もし原反がゆるやかに蛇行を繰り返しているようであれば、それはインフィード・アウトフィードのテンションの不安定が原因の場合がありますので確認が必要です。 もしインフィード・アウトフィードのテンションが安定しているのに蛇行があるようでしたら、機械の芯だしやローラの不具合が考えられます。 Q15 シワとテンションは関係ある? 張力が強すぎるとシワが発生するのでしょうか? また版の径差も関係ありますか? A15 シワと張力は大いに関係あります。 特に薄物の原反の場合には注意が必要です。 またユニット間で発生するシワの場合、インフィードとアウトフィードのテンションを下げることはもちろんですが、さらに版の径差を小さくして、ユニット間の張力も小さくする必要があります。 巻取機の場合、張力を小さくするとタケノコ状態になりやすいため、この場合は巻取りテンコンのテーパ設定を適正値になるよう気をつける必要があります。 Q16 カラコンの正しい使い方とは? カラコンは見当ずれを無くすのに大切な役目を果たしていることはわかっているのですが、 それだけでいいのでしょうか? A16 各ユニット間のテンションが安定していれば見当ずれは起きません。 ところが実際は、
・乾燥ボックス内温度変化 等により、“微妙な”テンション変動が起き“微妙な”見当ずれが生じます。 カラコンの本来の目的はモニター(監視)機能です。 モニター中に“微妙な”見当ずれを発見してそれを修正するのがカラコンの正しい利用法なのです。 不安定なテンコンのため発生した見当ずれを一生懸命追っかけているのは、決して正しいカラコンの使い方ではありませんので念のため。 Q17 巻出しのテンション値は? 巻出しのテンションはどういうふうに設定すれば良いのでしょうか? A17 巻出しにブレーキをかけてテンションを発生させる目的は、たるみを生じないことと、シワをのばすことではないでしょうか。 それと見当ずれを起さないようにするには、全体的に低いテンションで運転したほうがベターです。 このことから、インフィードよりも少し低く設定したほうが良いと考えられます。 Q18 巻出しの助走は必要? 切換時に、DCモータで助走をかける巻出機を見かけますが、そのほうが切替え時のロスは減るのでしょうか? A18 これはインフィードがトルクテンコンか速度テンコンかで異なります。 インフィードがトルクテンコン(パウダ式)の場合は、助走をかけた方が大きくロスを減らすことができます。 インフィードが速度テンコン(サーボ式)の場合は切換時のショックがほとんど中に伝わらないので、ロスはほとんど変わりません。 巻出機に助走装置をつけると、多額の費用がかかりますので、このことからもインフィードにサーボ式テンコンを採用することは大きなメリットとなります。 DCモータ式の巻出機が壊れた場合、パウダブレーキでいいということです。 Q19 巻き取りのタケノコ状態を無くすには? 薄物を低いテンションで巻く時や、滑りやすい原反の時タケノコ状態になりやすいのですが、それを防止するためにはどうしたらいいのでしょうか? A19 タケノコ状態とは巻きの途中で原反が横にずれる状態をいいます。原反の層間に空気を巻き込んで層間の摩擦係数を小さくしてしまうのが原因です。 解決方法としては層間の空気を除去してやればいいわけですから、タッチロールが有効です。 ただしタッチロールは付ければいいというものではなくて、当てる位置、角度、強さに注意を払う必要があります。 通常はエアーシリンダを用い、強さの目安として空気の圧力計が使用されます。 さらに進んで圧力を巻き原反の巻き方向のテンションに換算したもの採用すれば、巻きの強さは巻きテンションとタッチロールテンションの合計ということになります。 Q20 巻取機のDCモータが壊れたら? 古い機械で巻取機にDCモータのついたものを使っていますが、もし壊れたらどうしたらいいのでしょうか? A20 DCモータは過去の製品で、すでに製造中止となっています。 DCモータに代わって登場したのがサーボモータです。 従ってサーボモータに変えるのが正解です。 DCモータがターレットの外についているものは比較的容易に交換できますが、ターレット上にある場合は、スリップリングの交換や追加が必要となるため、かなりやっかいな工事となります。 巻取機にトルクモータを使用している場合もやはりサーボモータで交換が可能です。 Q21 巻出機のDCモータが壊れたら? 古い機械で巻出機にDCモータのついたものを使っていますが、もし壊れたらどうしたらいいのでしょうか? A21 DCモータは過去の製品で、すでに製造中止となっています。DCモータに代わって登場したのがサーボモータです。 従ってDCモータをサーボモータに変える方法がありますが、その前にちょっと待って下さい。DCモータは助走のためにあるのですから、 もしインフィードがサーボ式なら必要ないことになります。 その時は安価なパウダ式でよいのです。 もしインフィードがパウダ式だったら、 インフィード・・・サーボ式 巻出し・・・・・・パウダ式 にするべきでしょう。 この方が印刷機全体の性能アップとなります。 Q22 印刷の3要素とは? 印刷機の具備すべきものを3つあげるとしたら何でしょうか? A22 1 芯だし 印刷機に限らず機械の基本で、これが狂っているといろいろの不具合が発生する原因となります。 2 テン ション 見当ずれのほとんどの原因はテンションと言っても過言ではありません。見当ずれの無い印刷をするにはインフィードとアウトフィードのテンションの安定が不可欠です。 3 製版 製版技術の印刷に与える影響は大きいものがあります。良い製版会社とお付き合いするのはもちろん、製版の良し悪しを見分ける力をもつことが大切です。 2010年3月 |