お客様の声
このホームページ開設の時から「お客様の声」を掲載したいと思っていましたが、今回第一号として旭特殊プリント㈱に寄稿していただきました。
当初3つの工場で印刷機6台で操業していたのを現在の2台に至るまでのいきさつを詳しく書いていただきましたので、じっくりとご覧ください。
1、大豊特殊紙業について
(1)、ヤマデンが巻出し機を改造する以前の状態
佐藤鉄工の900幅の3色機。巻出しはコルクのクラッチ板をスプリングで押さえつけるだけの単純な構造で、特にインフィードに関しては制御は全く無の状態でした。
(2)、ヤマデンが巻出し機を改造して何が変わったか。
巻出しのクラッチ板の代わりに、エイコー製の中古のテンションコントローラー(ピックアップ式)を取り付け巻出しのテンションを安定させた。(インフィードは無のまま)
それまでビニロンなど伸縮の多いフィルムはピッチ不良が発生し、製袋工場からいつも苦情をもらっていた。巻出しを自動テンションコントロールに変えてからは、一気に改善しピッチ不良は皆無になった。
ただし、インフィードに制御がかかって無い為、多色刷りの時つなぎのロスは相変わらずで、柄の戻りが非常に遅かったです。
(3)、大豊特殊紙業が廃業に踏み切った理由
7年前に、昭和45年に創業した共同経営者の林氏が持病の糖尿病を悪化させ引退。印刷自体は安井氏と小田原氏でもともと2人でやっていたので影響はありませんでしたが、弊社との委託契約により配送及び営業事務・経理事務はまかなえたものの、肝心の営業がおろそかになり徐々に客先・仕事量が減り、リーマンショックの影響もありついには売り上げの6~7割が弊社からの1色を中心とした孫請け仕事となり、ついには立ち行かなくなり体力のまだ残っているうちに自主廃業を進めることとなりました。
(4)、大豊特殊紙業を閉鎖した後何が変わったか
1色を中心に長年助けていただきましたが、弊社も玉川印刷吸収やリーマンショックの影響もあり、仕事量が足らない状態でしたので、何とか1色でも稼働させながら取り立てて困ることはありませんでした。
ただし収益率は格段に下がり、それまでの製造原価率65%が80%を超えるほど営業成績は悪化しました。
(5)、その他
あのまま大豊特殊紙業が営業を継続していたら、1年後あるいは半年後には倒産していたかもしれません。今でもあのタイミングでやめってよかった、あのタイミングでしかなかったと思っております。
その後安井氏、小田原氏両名を弊社のオペレーターとして採用し、安井氏は本社を玉川へ移す平成21年12月まで働いていただき勇退。小田原氏においては今もなお現役を続行しております。
2、5色機について(塚本鉄工)
(1)、改造以前の状態
巻出しはパウダーブレーキ制御、インフィードはPIVによる自動制御。
アウトフィードも同じくPIV制御、巻き取り機は五条電機の巻き取りシステム。
PIVに関しては当初、「メカ制御です。」と説明は受けましたがなかなか理解できずに、それでも自動制御出来ているからと信じていました。ただし徐々に疑問が深まり、時としてPIVは自動運転より手動でテンションを固定した方が印刷が安定するということに気づき始めました。メカ制御と電気制御という言葉を理解するようになったのは、そのころからでした。
(2)、インフィードを改造して変わったこと。
まずもって印刷時に見当が狂いにくくなりました。それよりもっとも大きな違いは、紙つなぎの時の柄の戻りが早く、ロスが極端に減りました。従来だと1回の紙つなぎで約30M~50Mのロスが出ていましたが(4色~5色刷りの場合)、改造後は約15M~20Mで収まるようになりました。その事は紙をつないだ時のカラコンの警報音ではっきりとわかります。以前は紙をつないだ瞬間からなり始め、つなぎが巻き取られてからやっと鳴りやんでいました。改造後は、つなぎが2色目を通過する手前あたりから鳴り始め、5色目を通過したあたりで鳴りやみます。ただし、オペレーターのつなぎ方によって多少の影響はあります。
(3)、アウトフィードを改造して変わったこと。
インフィードを改造してから、アウトフィードを改造するまで4年弱かかりました。予算が無いからというのが第一の理由でしたが、それ以外にもインフィードさえしっかりしていればアウトフィードはあまり影響無いのではという勝手な解釈がそうさせていました。徐々に多色の仕事も頂けるようになり、気づいた事は、1~3色印刷くらいならインフィードさえしっかりしていれば何とかなりますが、4色以上となるとユニットの後ろの方で毎回トラブルが発生するという点でした。何度もヤマデンさんに説明を受けて、やっと理解できるまでに4年もかかりました。するとどうでしょう、アウトフィードを改造した途端、毎回ロスを出して赤伝をもらっていた5色刷りの仕事が、嘘みたいに楽に印刷することが出来ました。当然
赤伝をもらうことも無くなりました。
(5)、その他
これもヤマデンさんから教えてもらったことですが、グラビア印刷機は巻出しからインフィード、アウトフィードから巻き取りまで、全てがベストコンディションでないとよい印刷は出来ないということを勉強させてもらいました。今はもっぱら見当合わせはテンコンとカラコンに任せて、インキ粘度のコントロールやインキ飛び、版かぶり等のトラブルに集中して作業させて頂いております。
3、4色機について(中島精機)
(1)、改造以前の状態
巻出しはパウダーブレーキによる自動制御(ピックアップ式)。インフィード及びアウトフィードはエイコー測器の速度テンコン。巻き取り機はエイコー製のベクトルモーター制御。
全体にテンションのバタつきが多く見当も安定せず、巻き取り機に至っては巻き芯のシワが多く発生し特にラミネート工場からのクレームが多かったです。
(2)、インフィードを改造してかわったこと。
テンションが0.1~0.3kgほどの誤差で収まるようになり(ただしフィルムの伸縮や、特に紙などはもっとバタつく時もあります)、OPPやPETの印刷においてはほとんど見当狂いが発生しなくなりました。
(3)、アウトフィードを改造して変わったこと。
機械の操作性のため、2色刷りや3色刷りを前側のユニットではなく、後ろ側のユニットで印刷することがよくありますが、見当精度は全く問題なく安定しております。
(4)、巻き取り機を改造して変わったこと。
大きな構造的な改造ではなく、新しく操作盤を作成していただき特に助走のスピードやトルクを適正に調整していただき、現在では巻き芯の巻き絞まりも解消されラミネート工場からのクレームもほとんどなくなりました。
(5)、ユニット間のテンションメーター付けてみてわかったこと。
まさに見える化!通常ユニット間のテンションは版の径差によって発生します。ただしゼロ径差だからといって、ユニット間のテンンションがゼロになる訳ではない事は経験上知ってはいますが、じゃあはたしてゼロ径差の場合何kgかかるのか?あるいは0.1径差の場合はどうか?0.2径差の場合はどうかなどは全くの感覚的なものしかありませんでした。今回見える化することにより、フィルムの種類により全く変わってくるとうい事実もわかりましたし、視点をかえてインフィード及びアウトフィードが径差によって発生しているテンションにどの程度影響を及ぼすかなど、まだまだ勉強すべき点は沢山あります。
(6)、その他
5色j機の場合と同じですが、グラビア印刷機はトータルバランスがとても大事です。
どこかに一つ異常があったり、どこかに一つルーズな動きをする箇所があると、なかなか良い印刷は望めません。
4、5色機について(名古屋精密) すでに撤去済み
(1)、以前の状態
巻出しはクラッチ板、インフィードはリングコーン、アウトフィードはPIV,巻き取り機は大崎電気製。
10年前までは仕事出来ていましたが、現在ではとても印刷出来る状態ではありませんでした。
5色機ですが、1色の無地パートコートを中心に2~3年使用しましたが、昨年撤去しました。
(2)、インフィードのリングコーンを取り外して変わったこと。
取り外す以前に、ヤマデンさんにテンションメーターを仮設で付けていただいて、リングコーンのハンドルを少し回すだけで、極端に言うとテンションが3kg~5kgも変動することを教えてもらいました。
はっきり言ってリングコーンはない方がいいです。巻出しのパウダー制御だけの方が随分ましです。
(3)、アウトフィードをPIVからパウダー式に改造して変わったこと
2、の(3)と同じです。
(4)、巻き取り機を大崎電気製から三菱製に改造して変わったこと。
改造前よりは随分良くなりましたが、それでもやはり巻きシワや巻き絞まりといった不具合は最後まで出続けました。
(5)、その他
機械を撤去し、その分作業スペースも余分に確保できて、今ある4色機と5色機2台で十分に仕事はこなせています。機械があるばかりに、採算が取れない1色印刷や割の合わない仕事も長年こなしてきましたが、機械を撤去したことによりある程度仕事が選べるようになり、採算割れの仕事は強気に断るようにしております。また、65歳以上の余剰人員もこの際勇退していただきましたし、1色や無地パートコートの仕事は外注委託し、得意先様には迷惑のかからない様な体制が出来上がりました。
ある本で読みましたが、「印刷屋は印刷機を捨てれば捨てるほど儲かる!」というのは、本当でした。
5、全体の変化について
(1)、玉川印刷工業購入後の状態
長年印刷不良を出し続けてきたせいで、客離れがすすみ、残ったのはやる気のない社員と、手入れが行き届かない印刷機のみ。恥ずかしながらこの年から3年間赤字を出し続けました。1年目が500万円2年目が1,000万円、3年目が300万円。たった3年間で1,800万円もドブに捨ててしまいました。
2年目の頃には、今回の吸収合併はさすがに失敗だったかと随分自信も無くしましたが、今更後戻りも出来ませんからすぐに気持ちを切り替えて、あらゆる事に前向きに取り組むように努力しました。
(2)、赤字解消の為に行った施策のいろいろ
まず初めに取り組んだのは、印刷不良の削減。とはいっても、それほど簡単にはいきません。そこで
行ったのは、毎朝始業前の朝礼。8時15分から始めて、昨日の作業の反省点と改善策、ならびに今日の作業の予定の確認と注意点の徹底。このことから、今まで私も知りえなかった機械の不具合や不良個所を徹底的に洗い出すことが出来ました。あとは底をついた予算と相談しながら、ヤマデンローンを駆使しながら次から次えと機械の改修にあたる事が出来ました。合わせて今日の予定をオペレーター本人の口から確認することにより、手間取って遅くなった場合でも従来なら明日にずらしていた予定を、たとえ夜中になっても仕上げる癖をつけることが出来ました。不良が出た場合は、印刷予定終了後に夜な夜な検品をやってくれるようになりました。毎朝たった15分のおかげで、従業員全員の意識改革に成功しました。今でも毎日続けております。とわいえ、未だに印刷不良は時として出ますが、1つだけ
全員で約束したことがあります。印刷不良は出しても仕方ない、ただし絶対にこの工場から外に出さない
。このことを日々徹底して毎日の作業にあたっております。おかげで従業員も早く家に帰りたいために休憩時間も短くなりましたし、作業の内容もいかに無駄なく段取りをするかを常に考えるようになりました
。予定通り作業が終われば、さっさと5時半に帰ってもらっても一向に構いません。なかなかそうはいきませんが・・・。
それと最後にもう一つ大事なこと。それは人員カットです。大豊特殊紙業を閉鎖してから、最大で11名の従業員がおりました。なかにはいくら言っても聞く耳を持たない人間がいることも事実です。それでも65歳まではと思い、満65歳の誕生日には解雇を申し渡した者もいました。また、玉川印刷工業の元々のオーナーも雇用し続けましたが、やはり長年トップを経験した人に、一回り以上も年下の私の言うことを聞けと言っても、やはりそれは無理でした。しかるタイミングで勇退していただきました。ただし人員カットといっても大企業のそれとは全く違います。ちゃんとその後も困らないような気配りをしながら辞めていってもらいました。
(3)、黒字転換へのおおきなファクター。
黒字だとか赤字だとかいうのは、通常決算書の中の損益計算書の数字だけをみて評価されます。
しかし私に言わせれば、それはあくまで税務署に申告をするためのひな形であって、実際の経営内容とはかなりのずれが生じます。経営者として大事なのは、そのずれが良性なのか悪性なのかをきちっと把握することだと思います。最終的に1番大事なのは、異論があろうかと思いますがキャッシュフローです。毎月毎月キャッシュフロー計算書さえしっかり見ていれば、企業の倒産は半減すると思います。
キャッシュフロー計算書をおろそかにしている企業経営者が意外に多いのかもしれません。
キャッシュフロー計算書などというと、何だか難しくきこえますが簡単に言えば資金繰り表の事です。
毎月の資金繰りのなかで、儲かっているときはいいです。赤字に転落した時に経営者として1番大事な事は、如何に自分の身を切れるかということです。倒産会社の社長さんは、倒産する前の月まで多額の報酬を手にしていたという話は、世の中でいくらでもあります。これは私に言わせればこれはありえない話です。確かに社長の報酬をカットしても焼け石に水といったところです。が、そのことを実践することで、従業員の目つきが変わるのです。社長の報酬はそのままで、従業員の給料だけカットしていたら、1~2か月は楽になるかもしれませんが、きっと半年先には倒産します。社員のモチベーションがさがるのが最大の理由です。会社が苦しいときは社長自らが先頭に立って身を切って、出来るだけ社員に不安を与えないようにピンチを乗り切るべきです。その姿が本物であれば、きっと従業委員も多少の賃金カットには理解を示してくれるはずです。儲かっている会社の社長は誰でもできます。赤字の会社の社長こそが、真の経営手腕を問われるのです。
(4)、現在の状況
2年前に黒字に転換し、昨年もわずかながら黒字で決算を終える事ができました。現在旭特殊プリント株式会社は第43期目に突入しております。3月の中間決算では黒字でした。また、このところ忙しく、
4月は単月で70万円も利益が出ました。売り上げも今期は史上最高の8,000万円にせまる勢いです。
自分のやって来たことを信じて、ひたすら前向きに努力を重ねていく覚悟です。
(5)、その他
経営者の大事とする順位。
①、従業員とその家族。
②、仕入先様、外注協力工場様。
③、得意先様。
④、近隣住民や、近隣地区の環境。
⑤、株主
この順列だけは、肝に銘じて間違えないように努力いたします。
6、将来への展望
(1)、品質に関して
得意先からの要望は、すでに人間の視力の限界をとうに超えております。1日も早く検品機の導入を目指します。
(2)、稼働率に関して
5年前、玉川印刷工業と一緒になったころは確か35%だったことを記憶しております。
現在60%近くまで改善されてきております。さらなる努力を続けます。
(3)、1昨年が7,200万円。昨年が6,400万円。今季は8,000万円近くはいきそうです。
商売でから、当然波はあります。現在の得意先様のフォローと同時に、常に新規開拓をめざして努力致します。今の時代の流れからして、新規でとった分くらいは自然に仕事が消滅していきます。新規がなければ何をかいわんやです。
(4)、設備にかんして
既存の機械設備は、まだここ数年は十分に使えます。が、時代の流れは私が思う以上に早く、激しい物と考えます。先ほど機械を減らせば儲かるというはなしをしましたが、将来的には、縦横カラコン付及び検品機インライン装備の6色機か7色機1台で、社員5~6名の精鋭部隊を目指します。
(5)、その他
ヤマデンさんにおかれましては、テンションの関係を中心にその他の機械周りの事や、時には経営哲学を伝授頂き、誠にありがとうございます。今後ともご指導、ご鞭撻のほど、心よりお願い申し上げます。
平成25年5月22日
旭特殊プリント株式会社 代表取締役社長 田中 仁